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大阪地方裁判所 平成11年(行ウ)55号 判決 1999年12月21日

原告

株式会社リバーストン

右代表者代表取締役

吉田源三

右訴訟代理人弁護士

谷戸直久

被告

豊能税務署長 出島信彦

右指定代理人

黒田純江

山本弘

松田稔

石田嘉男

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が平成一〇年六月二九日付けでした原告の平成六年五月一日から平成七年四月三〇日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、納付すべき税額五九五万四八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

2  被告が平成一〇年六月二九日付けでした原告の平成七年五月一日から平成八年四月三〇日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、納付すべき税額五七二万〇二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

3  被告が平成一〇年六月二九日付けでした原告の平成八年五月一日から平成九年四月三〇日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、納付すべき税額五三五万一八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する本案前の答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、飲食店の経営等を目的とする株式会社であるが、平成六年五月一日から同七年四月三〇日まで、平成七年五月一日から同八年四月三〇日まで、平成八年五月一日から同九年四月三〇日までの各事業年度の法人税について、別紙一覧表の「<1>確定申告」欄記載のとおり納税申告をしたところ、被告は、平成一〇年六月二九日付けで、原告に対し、同一覧表の「<2>更正」欄記載のとおり更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を合わせて「本件処分」という。)をした。

2  原告は、本件処分を不服として、同年八月三〇日、被告に対し、異議申立てをしたが、被告は、同年一一月二六日、これを棄却する旨の決定をした(以下「本件異議決定」という。)

3  原告は、本件異議決定を不服として、同年一二月三〇日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成一一年四月一二日、これを却下する旨の採決をした(以下「本件採決」という。)

4  しかしながら、本件処分は、原告の所得を過大に認定した違法がある。

5  よって、原告は、被告に対し、本件処分の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

1  本件異議決定に係る異議決定書の謄本は、平成一〇年一一月三〇日、原告に送達されたから、原告が本件異議決定について、国税不服審判所長に対し、審査請求することができる期間は、同年一二月二八日までである(国税通則法七七条二項及び同法一〇条)。

しかるに、原告が、審査請求をしたのは同年一二月三〇日であったため、国税不服審判所長は、不服申立期間経過後にされた不適法な審査請求であることを理由に、これを却下する旨の本件裁決をした。

2  ところで、更正処分や加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えは、適法な不服申立てを経た後でなければ提起することができない(行訴法八条一項ただし書及び国税通則法一一五条一項)。

本件訴えは、このように適法な審査請求を経ずになされたものであるから、不適法である。

三  本案前の主張に対する原告の認否・反論

1  被告の本案前の主張事実のうち、原告が異議決定書の謄本の送達を受けた日、審査請求をした日及び審査請求に対して被告主張のとおりの本件裁決があったことは認め、本件訴えが不適法であるとの主張は争う。

2  国税通則法七七条二項の「異議決定書の謄本の送達があった日」とは、審査請求をなす権限を有する者が、異議決定の存在を現実に知った日を指すものと解すべきである。

本件においては、本件異議決定に係る異議決定書の謄本の入った封書が原告に送達された平成一〇年一一月二八日は土曜日であり、たまたま出社していた従業員がこれを受領したに過ぎず、原告代表者が、右封書を開封し、異議決定の存在を現実に知ったのは、月曜日である同年一一月三〇日になってからであった。

したがって、異議決定書の謄本の送達があった日は、同年一一月三〇日

と解すべきである。同年一二月三〇日にされた本件異議決定に対する審査請求は、不服申立期間経過前にされたものとして適法であるのに、国税不服審判所長が国税通則法七七条二項の解釈を誤って却下したに過ぎない。

理由

一  原告が、平成一〇年一一月二八日に本件異議決定に係る異議決定書の謄本の送達を受け、同年一二月三〇日に審査請求をしたこと及び国税不服審判所長が本件裁決をもって右審査請求を不適法として却下したことは、当事者間に争いがない。

二  国税通則法七七条二項は「第七五条第三項の規定による審査請求は、第八四条第三項(異議決定の手続)の規定による異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して一月以内にしなければならない。」と規定しており、かような明文規定がある以上、ここにいう「送達があった日」は、その明文のとおり異議決定書の謄本の送達があった日と解するほかなく、これを被処分者(法人の場合は代表者)が異議決定の存在を現実に知った日と解すべき合理的な根拠も見当たらない。原告の主張は独自の見解であり、採用できない。

三  すると、本件処分についての審査請求は、法定の不服申立期間を徒過してされた不適法なものであり、これを却下した本件裁決は正当であるから、本件訴えは、適法な審査請求についての裁決を経ていないことが明らかであって、行訴法八条一項ただし書及び国税通則法一一五条一項により不適法なものといわざるを得ない。

四  よって、本件訴えは、不適法であるから却下することとする。

(裁判長裁判官 八木良一 裁判官 平野哲郎 裁判官 山田真衣子)

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<省略>

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